執筆・文責:弁理士 中村幸雄(登録番号 第12870号)

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この記事の結論

発明がまとまっていなくても、解決したい課題、工夫の概要、現在の進捗、関連する技術や製品という4項目が大まかに分かれば相談を始められます。完璧な資料を作ることより、分からない点を含めて早めに共有することが重要です。

「内容がまとまってから相談しよう」と待ち続けていませんか

特許相談を検討しているものの、「まだアイデアがまとまっていないから」「もう少し試作が進んでから」と相談を先送りにしている方は少なくありません。

しかし、内容が完全に固まってから相談しようとすると、相談のタイミングは永遠に来ない場合があります。技術開発の現場では、「まとまった」と感じる瞬間はなかなか訪れないからです。

また、相談準備を進めてから来所した結果、先に他社が類似の出願をしていた、あるいは自社での公開が先行してしまい新規性を失っていたというケースも実際に起きています。

発明のポイントは、相談の中でも見つけられる 発明の余白では、アイデアをまとめてから相談を受け取るのではなく、対話を通じて一緒に発明のポイントを見つけるところから始めます。「まとまっていない」は、相談できない理由にはなりません。

相談前に確認しておくとよい4つの項目

とはいえ、何も考えずに相談に来るより、いくつかの点を事前に考えておくと、相談の質が上がります。完璧な答えでなくてよいので、次の4つについて分かる範囲で思い返してみてください。

Item 01

解決したい課題は何か

「何かを工夫した」という事実だけでなく、その工夫が何のためのものかを言語化しておくことが重要です。特許において重要なのは「課題と解決手段の対応関係」であるため、課題が明確になっているほど、発明の本質を見つけやすくなります。

例:「従来の工程では○○という問題があり、それを解決したかった」「○○という状況で△△が難しかった」
Item 02

工夫・アイデアの概要

課題に対して「何をしたか」「何をしようとしているか」、そして「なぜそれで課題が解決できるのか」を、専門用語を使わなくても構いませんので、できる限り具体的に説明できるようにしておいてください。解決原理が言語化されていると、発明の本質を見つける手がかりになります。図や手書きのメモがあれば、それを持参していただくだけで十分です。

例:「○○という方法を使うことで、△△という理由から従来の問題が解消された」「○○の代わりに△△を使ったら上手くいった。おそらく□□という仕組みが働いているからだと思う」
Item 03

現在の進捗段階

構想段階なのか、試作を経て検証中なのか、すでに実用化されているのか。進捗段階によって、相談の方向性と出願の戦略が変わります。また、公開・発表・販売などの実績がある場合は、その時期も重要です。

例:「アイデア段階で試作はまだ」「試作品ができて社内で使っている」「すでに製品として販売している」
Item 04

同じ課題を解決しようとしている既存の技術や製品を知っているかどうか。完全な調査は不要ですが、「こういうものがすでにある」「競合他社が似たことをしている」という情報があれば、相談の精度が上がります。

例:「○○社が似た製品を出しているが、うちのものとは△△が違う」「特許を検索したことはないが、競合は知っている」

この4つに「なんとなく」でも答えられれば十分です

上記4つは、完璧な答えを用意する必要はありません。「課題は○○だと思うけど、正確にはよく分からない」「工夫の説明が難しい」という状態でも、相談は進められます。

むしろ、まだ言葉にできていない部分を一緒に解きほぐすことが、発明発掘セッションの役割です。何が本質で、何が周辺的な工夫なのかを対話の中で明確にしていきます。

相談準備ナビを活用する

「4つの項目を考えたいけれど、一人では難しい」という方には、相談準備ナビをご利用いただけます。質問に答えていくだけで、相談内容の骨子が自動的にまとめられ、問い合わせ文のたたき台が生成されます。

相談準備ナビはあくまで相談内容をまとめるためのツールです。ここでの回答が特許性の判断に使われるわけではありません。作成された内容をベースに、弁理士との相談をスムーズに進めるための補助として設計されています。

ナビが確認するのは10問です。上記の4項目は、そのうち相談を始めるために最低限考えておきたい中核部分にあたります。残りは、問い合わせ文を作るためにナビが補う情報です。とくに公開状況・予定は、出願できる期限に直接かかわるため、分かる範囲で必ずご入力ください。

相談準備ナビの全設問(10問)
#設問何を答えるか本記事の4項目
1技術テーマ分野・製品カテゴリ—
2解決したい課題何に困っていたか①
3発明・工夫の概要どのような工夫をしたか②
4進捗段階構想/試作/検証/実用化③
5公開状況・予定展示会・発表・掲載・販売・提案の実績と予定—
6関与した人・会社社内の開発者、外注先、共同開発先—
7関連技術の認識知っている競合製品・類似技術④
8資料の有無メモ・図・仕様書があるか—
9今回の目的相談で最もしたいこと—
10競合・同業他社情報同業の動きで気になること④を補足
相談準備ナビを試してみる 10問の質問に答えるだけで、相談したいことの確認と問い合わせ文の作成を一度にできます。まとまっていない状態からでも、回答しながら自分のアイデアの輪郭が見えてきます。

特許相談の準備に関するよくある質問

相談前に、正式な図面やソースコードを用意する必要がありますか?

必須ではありません。手書きの図、画面の例、処理のメモなどでも、課題と工夫が伝われば相談の手掛かりになります。資料を整えることに時間をかけすぎず、分かっていることと、説明しにくい部分をそのまま共有してください。

先行技術調査を済ませてから相談した方がよいですか?

調査を済ませることは相談の前提ではありません。知っている類似製品や特許、論文があれば持参してください。すでに調べた場合は、見つかった資料だけでなく、調べた範囲や気になった点も共有すると役立ちます。検索で見つからなかったことだけで、新しいと判断するのは避けます。

何が新しいのか自分では分からなくても、相談できますか?

相談できます。「以前はどうしていたか」「何に困っていたか」「どこを変えたか」を順に説明してください。自分では当たり前だと思っている判断や構造が、検討の手掛かりになることもあります。新しさを断定するより、変更の経緯を具体的に伝えることが大切です。

相談用のメモには、最低限何を書けばよいですか?

解決したい課題、工夫の概要、現在の進捗、知っている関連技術の4項目を、分かる範囲で書いてください。公開・展示・納品などの予定がある場合は、その日付も添えます。すでに社外へ説明したことがあれば、相手、時期、説明内容も共有すると、優先して確認すべきことが分かります。

参考資料

  1. 特許庁「お問合せ先一覧」

執筆・文責

弁理士 中村幸雄

AIサービス、ソフトウェア、業務フロー、試作・現場改善に関する発明発掘・特許相談を扱う弁理士。 「発明の余白」では、まだ曖昧な技術構想や現場の工夫から、発明のポイントを見つけるための情報を発信しています。